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2012年1月24日火曜日

【報告】2012年1月23日の古典戯曲を読む会@東京

みぞれから雪にかわる寒い日でしたが、11人が集まりました。このうち3名は初めて来られた方でした。今月からイプセン『人民の敵』(毛利三彌訳)を読み始めました。1882年に発表された作品で、前作が『幽霊』、次の作品は『野鴨』になります。

イプセンはこの戯曲を喜劇としていますが、その主題は社会的で重いものです。ノルウェーのとある温泉町が舞台で、主人公のストックマン博士はこの町の温泉施設の専属医師です。ストックマン博士は、この町の温泉が汚染されていることを発見しました。町がこの汚染を食い止める対策を行うよう、彼は提言しようとします。博士はこの発見が町の人間に好意的に受けとめられることを信じこんでいました。この博士の無邪気さは、私にはかなり奇妙に感じられました。しかしこの善良さと町の有力者、彼を利用しようとする左翼新聞者たちとのギャップが、ある種の喜劇的状況を作り出していることは確かです。
汚染をなくすための温泉施設の改善には莫大な費用と長い休業が伴います。温泉汚染の事実の公表は町に莫大な経済的な損失を及ぼすことは間違いありません。この町の町長であるストックマン博士の兄は、温泉の汚染がストックマン博士が主張するほどひどいものではないと強弁し、ストックマン博士にこの事実を公表しないよう圧力をかけます。

昨夜は五幕のうち二幕を読みました。東京での古典戯曲を読む会は六年前から開催されていますが、イプセンを取り上げるのは今回が初めてです。医師、研究者の良心に従い事実を公表しようとするストックマン博士と公表されたことによる経済的損失の大きさを恐れ、事実を隠蔽しようとし、それを公表しようする人間に圧力をかける町長、そしてさまざまな思惑からこの両者に接近するマスコミや民衆たちの姿には、震災後の原発事故を巡るわれわれ自身の姿の戯画を見ずにはいられません。また原発事故に限らず、組織に属していればこうした難しい選択を迫られることは珍しいことではないはずです。こうした状況にたちあったとき、人はどういう選択を取り得るのかを、イプセンは熟達した劇作術でスリリングに話を展開させながら、示しています。

昨夜は五幕のうち、二幕の終わりまで読みました。次回は三幕から読みます。途中からの参加も可能ですので、興味ある方はお気軽にご参加下さい。毛利三彌訳を準備することができない方はご連絡頂ければコピーを用意します。

次回の読む会は、2/20(月)午後七時から九時までです。いつも使っている早稲田大学教室は入試ロックアウト期間中なのでこの日は使用できません。 来月は通常とは別の場所での開催となります。場合によっては会場費の負担を出席者の方々にお願いすることになるかもしれません。場所が決まりましたら、また告知します。

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