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2012年5月21日月曜日

【報告】2012年5月19日(土)の古典戯曲を読む会@東京

今回のテキストは、森本薫の一幕劇「かどで」。現在 森本薫の戯曲は出版物として刊行されていないので、絶版となっている『森本薫戯曲全集』(牧羊社 1968)のコピーを全員に配布しました。 
参加者は全部で18名と、先月に続き大盛況。しかしその内訳が、男性3名に対して女性15名という、かつてない男女比。これまでの会を平均すれば、男女半々か男性の方が少し多いくらいなのに、今回に関しては何故こういうことになったのか今もって謎です。初参加の方は4名、2回目の方が5名でした。 

この「かどで」は、いわゆる難解な作品ではないのですが、微妙な問題を抱えた家庭を舞台にした心理劇で、多くの物事が暗示的な台詞でほのめかされたり「間」の中に隠されていたりするため、家族関係や一つ一つの台詞に秘められた真意を理解していないと、その面白さが伝わりません。しかも日常的な光景で始まり、隠された問題が次第に明らかになっていく、いわばミステリー仕立ての構成。ほとんどの人が初めて読む戯曲なので、いきなり読ませても、皆どういう心理で台詞を読んでいけばいいのか分からないだろう⋯と考え、レジメに登場人物の関係と結末まで含めたあらすじを記し、それを最初に読み、上演歴などの簡単な説明をしてから本編に入るという、初めてのやり方を試みました。結論から言うと、これは、シェイクスピアのように全ての感情を台詞で明示してくれる作品と違い、多くの物事が秘やかに示されるタイプの作品においては、今後も有効な手法だと思いました。 

しかし、そのような手法を使ってもなお、初見でこの戯曲を読みこなすのは難しかったようです。読み慣れない漢字はあるものの、難解な単語が使われるわけではないし、言い回しそのものが難しいわけでもありません。しかし、ごく当たり前の言葉や一見平凡な台詞に秘められた意味、この「あなた」や「私たち」という指示代名詞は誰を指しているのか、途中で途切れたり遮られたりした台詞は本来なら何を言おうとしたのか⋯などなど、何度か読めば分かってくるし、実際の上演では動作や口調によって分かることも、初めて目にする戯曲の文字から真意を理解し表現するのは至難の業。外国語でも、見慣れないけれど意味が一つしか無い単語より、よく出てくるけれど多数の意味を持つ単語の方が、訳すのが難しいものですが、それと同じことです。皆 先が見えぬまま手探りで読んでいる感じで、この戯曲が持つ深みや面白さを掘り起こすところまでは行かなかったようでした。 
読了後も「面白い」という感想と「難しい」という感想の両方が交錯していました。しかし、森本薫がこの作品を書いた時まだ22歳であったことや、1935年にこれほど現代的に洗練された戯曲が書かれていたことには、多くの人が驚いていたようです。 

文学座アトリエ公演は50分だったので、合間に解説などを挟んでも読み切るのにせいぜい60分強⋯と見ていたのですが、これが何と読み終わるまでに90分! 読むことそのものに特に難渋したわけでもないのに、何故こんなに時間がかかったのか、全くもって謎です。読み終えたとき、すでに9時頃でしたが、森本薫の略歴を解説し、ごく簡単に感想を述べあって終わり。フリートークの感想は、最低でも10分以上は欲しいので、先月に続いて感想を述べる時間が短くなってしまったのが極めて残念でした。 

反省点やうまくいかなかった点も多い会でしたが、むしろそれ故にと言うべきか、ぜひとも森本薫作品には再挑戦したいものです。次は、やはり1回で読み切れる「みごとな女」でしょうか。 


終了後の飲み会には10名が参加(内女性7名)。いつもの安い店(早稲田蔵)が空いてなかったので、「麻の葉」という ちょっと洒落た店に。狭い店内は偶然にも貸し切り状態で、料理もあちこちから「美味しい」という賛嘆が上がり、そういう点では非常に良かったのですが、いつもは2000円程度で収まる飲み会が今回は3000円以上。ま、ワンシーズンに1回くらい使う分にはいいだろう⋯というところですかね。 


次回は6月23日(土)19時から。ふたばさんの進行により、アリストパネスのギリシャ喜劇「蛙」を読みます。ギリシャ悲劇は今も色々な形で上演されますが、喜劇の方は軽視されがち。その魅力にスポットを当てる会になりますので、ご興味のある方は ぜひご参加ください。 

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