岸田國士の短編戯曲集(『岸田國士I』ハヤカワ演劇文庫)から、「驟雨」を読みました。参加者は12名でうち5名が初参加でした。「驟雨」は1926年に『文藝春秋』に発表された一幕もの戯曲です。
新婚旅行で夫のふるまいに憤慨し、夫と別れ実家に帰ることを決意した恒子が、姉夫婦の家にやってきて、夫の身勝手さを愚痴ります。恒子は、新婚旅行中に夫が自分をほったらかしにしたまま、友人と飲み行ったことにとりわけ不愉快であったと語ります。姉の朋子は、妹の愚痴を聞きながらも、「男ってのはそういうものだ」とたしなめます。そこに朋子の夫の譲が入ってきて、夫の立場を弁護。しかし女性二人の反論にたじたじとなります。結局、夫婦関係の欺瞞のようなものが三人の会話のやりとりから浮かび上がって、白々しい空気が漂ってきたときに、驟雨がさっと降る。
ト書きや情景描写は最小限ですが、緻密な台詞で三人の本音や感情のゆれがはっきりと描き出された面白い戯曲でした。難読の当て字がいくつかあって、読むのに往生した箇所もありましたが。来月はじめに文学座の公演で上演される演目の一つです。
私の父親がまさに同じようなこと、結婚前のころ、母親を待ち合わせ場所に置き去りにしたまま、2時間も偶然会った友人と飲みに行ったことを、思い出しました。父親が自分で、ちょっと自慢げに何回かこのエピソードを話していたのです。そして私自身も実は似たようなことをしたことがあることも思い出しました。だから恒子の夫を弁護する譲の説明はたいへん説得力があるように感じられました。こういった子供じみたことを男というのはしたがるものなのかもしれません。女は女でまた別のやり方で男の愛情を試すようなことをしたくなるものだと思うのですけれど。
同じく文学座公演でとりあげられる「明日は天気」、「秘密の代償」も読む予定でしたが、今回は「驟雨」を読み終えたところで時間切れとなりました。
会終了後の飲み会には7名が参席しました。
次回の古典戯曲を読む会@東京ですが、
11/21(月)19時からの予定です。場所は早稲田大学文学部(戸山)キャンパス教室。教室の場所は変更があるかもしれません。テキストは引き続き、岸田國士の短編戯曲です。
12月の会は、
12/19(月)19時より開催の予定です。また開催日10日前頃に告知をtwitter、mixi、facebook等で行います。
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