2012年4月24日火曜日

【報告】2012年4月21日(土)の古典戯曲を読む会


今回のテキストはチェーホフの一幕劇「熊」(牧原純・福田善之訳『結婚、結婚、結婚!』群像社 2006年)。参加者は、古典戯曲を読む会@東京 始まって以来最多の22人。しかもその内13人が初参加。人数も雰囲気も進行も、普段とはだいぶ違うものになりました。

「熊」はチェーホフが28歳の時の作品。習作・未完成作品を除くと「街道筋」「白鳥の歌」に続く3本目の戯曲で、本作の次に姉妹編のような「結婚 申し込み」が書かれます。故人への借金を取り立てにやって来た男が、気の強い男勝りの未亡人に惚れ込んでしまい、二人が結ばれるまでの小喜劇。他愛ないと 言えば他愛ない話で、後の四大戯曲のような深みは全くありません。しかし二人が口論していく内に、最初は貞淑そのものに見えた未亡人が、亡き夫の女癖の悪 さに不満を爆発させたり、様々な色恋沙汰を経て女というものに飽き飽きしていた男が、決闘も辞さない未亡人の勝ち気な性分にコロッと参ってしまい「ほっぺ たにえくぼがあっても気に入った!」と言うところなど、細かいひねりが効いていて、なかなか楽しめる小品になっています。

参加人数が多いため、1回目の読みは1役ごとに回していくスタイル。その後、レジメを使ったチェーホフに関する簡単な解説を行い、普段のハコ割り 形式で2回目の読みを行いました。およそ2/3はテキスト初見の人たちでしたが、このような進行をすることで、2回目の読みでは皆役柄を理解し、それぞれ 工夫を凝らした読みをすることが出来ました。テキストの分量も全員がほぼ同じくらい読むことができ、異例なほどの大人数をうまくさばくことが出来たと思い ます。
残念だったのは、作品に対する自由な感想を述べる時間がかなり少なかったこと。一幕劇とは言え1回読むのに35~40分はかかるので、あれだけの 大人数で自己紹介をし、読む会の趣旨や読み方の説明を行い、テキストを2回読み、レジメを使った解説も行い…とやっていくと、どうしてもフリートークに割 ける時間が限られたものになってしまいます。そこを手短にしても、結局 終了時刻は21時10分頃と、普段より少々遅くなりました。

まず1回読んで、解説や感想を経た後で2回目の読み…と言うのは、テキストをじっくり味わうという点では非常に理想的なやり方で、今回も皆2回目 の読みの方が明らかに楽しそうでした。しかし現実には、かなり短めの作品でないと、そのようなスタイルを取れないのが辛いところ。状況によっては開始時刻 を30分か1時間早めるというのも一つの手ですが、参加者の適正人数や告知方法の問題などとも合わせ、今後の検討課題にしたいと思います。


次の開催は5月19日(土)。テキストは森本薫の『かどで』。これも一幕劇ですが、『熊』よりも長めな上に、ゆるやかなテンポや間を大切にすべき作品なので、2時間で2回読みは不可能。1回の読みで戯曲の真価を味わえる進行を工夫しましょう。
テキストは『森本薫戯曲全集』(牧羊社 1968)や 『森本薫全集』(世界文學社 1952年)などに収録されているものの、もはや店頭では販売されておらず、図書館で手に入れるしかありません。そのため参加者には全員コピーを配ることになりそうです。

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