- 今回のテキストはチェーホフの一幕劇「熊」(牧原純・福田善之訳『結婚、結婚、結婚!』群像社 2006年)。参加者は、古典戯曲を読む会@東京 始まって以来最多の22人。しかもその内13人が初参加。人数も雰囲気も進行も、普段とはだいぶ違うものになりました。
「熊」はチェーホフが28歳の時の作品。習作・未完成作品を除くと「街道筋」「白鳥の歌」に続く3本目の戯曲で、本作の次に姉妹編のような「結婚 申し込み」が書かれます。故人への借金を取り立てにやって来た男が、気の強い男勝りの未亡人に惚れ込んでしまい、二人が結ばれるまでの小喜劇。他愛ないと 言えば他愛ない話で、後の四大戯曲のような深みは全くありません。しかし二人が口論していく内に、最初は貞淑そのものに見えた未亡人が、亡き夫の女癖の悪 さに不満を爆発させたり、様々な色恋沙汰を経て女というものに飽き飽きしていた男が、決闘も辞さない未亡人の勝ち気な性分にコロッと参ってしまい「ほっぺ たにえくぼがあっても気に入った!」と言うところなど、細かいひねりが効いていて、なかなか楽しめる小品になっています。
参加人数が多いため、1回目の読みは1役ごとに回していくスタイル。その後、レジメを使ったチェーホフに関する簡単な解説を行い、普段のハコ割り 形式で2回目の読みを行いました。およそ2/3はテキスト初見の人たちでしたが、このような進行をすることで、2回目の読みでは皆役柄を理解し、それぞれ 工夫を凝らした読みをすることが出来ました。テキストの分量も全員がほぼ同じくらい読むことができ、異例なほどの大人数をうまくさばくことが出来たと思い ます。
残念だったのは、作品に対する自由な感想を述べる時間がかなり少なかったこと。一幕劇とは言え1回読むのに35~40分はかかるので、あれだけの 大人数で自己紹介をし、読む会の趣旨や読み方の説明を行い、テキストを2回読み、レジメを使った解説も行い…とやっていくと、どうしてもフリートークに割 ける時間が限られたものになってしまいます。そこを手短にしても、結局 終了時刻は21時10分頃と、普段より少々遅くなりました。
まず1回読んで、解説や感想を経た後で2回目の読み…と言うのは、テキストをじっくり味わうという点では非常に理想的なやり方で、今回も皆2回目 の読みの方が明らかに楽しそうでした。しかし現実には、かなり短めの作品でないと、そのようなスタイルを取れないのが辛いところ。状況によっては開始時刻 を30分か1時間早めるというのも一つの手ですが、参加者の適正人数や告知方法の問題などとも合わせ、今後の検討課題にしたいと思います。
次の開催は5月19日(土)。テキストは森本薫の『かどで』。これも一幕劇ですが、『熊』よりも長めな上に、ゆるやかなテンポや間を大切にすべき作品なので、2時間で2回読みは不可能。1回の読みで戯曲の真価を味わえる進行を工夫しましょう。
テキストは『森本薫戯曲全集』(牧羊社 1968)や 『森本薫全集』(世界文學社 1952年)などに収録されているものの、もはや店頭では販売されておらず、図書館で手に入れるしかありません。そのため参加者には全員コピーを配ることになりそうです。
月に一回集まって、声を出して古典戯曲を読む会です。声を出して戯曲を読むといろいろな発見がありますよ。 参加費は原則無料、場所は早稲田大学教室です。どなたでもご自由に参加できます。一回切りの参加でも、自分が興味ある戯曲が取り上げられているときのみの参加も可能です。 2015年10月までに当会がとりあげた戯曲のリストは http://koten-tokyo.blogspot.jp/2015/10/99.html をご参照下さい。
2012年4月24日火曜日
【報告】2012年4月21日(土)の古典戯曲を読む会
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