2013年7月15日月曜日

【報告】および【告知】2013年7月13日の古典戯曲を読む会と今後の予定

ピンター『バースデイ・パーティ』(全3幕)を2013年6月、7月の二回で読み終えました。
ホスト役は、新国立劇場でオペラの演出助手を務めたあと、イギリスなどで一年間、演出家としての研修を終えて帰国されたばかりの江尻裕彦氏でした。ホスト役の江尻氏による簡潔で的確な解説が随所に入ったことが、とらえどころのないテキストの解釈の手がかりとなりました。

二回とも10名強の参加者で、集まって声を出して読むということでは最適な人数だったと思います。
読み手の振分もきっちり行われていたので、戯曲を読むことの充実感を参加者の方々は得られたと思います。

戯曲についての感想は様々でしたが、私は大変興味深く読みました。ピンターは前衛的な作家というイメージがあったのですが、今回読んだ『バースデイ・パーティ』には、これまで私が読んだり見たりしたクーニー父子やアラン・エイクボーン、ジョー・オートンなどのイギリス喜劇作家の作品の系譜を感じました。ナンセンスな笑いのなかに、いかにもイギリスっぽい底意地の悪い毒があるように感じられました。モンティ・パイソンも私は連想しました。

ただ典型的な喜劇がもたらす喜びとはずれた、とらえどころない不可解で不気味な箇所がいくつかあって、そこがこの作品の魅力になっています。訳文(やや古くさい日本語ではありましたが、達者な訳だと思いました)からの印象もありますが、人物も物語も徹底した演劇的言語による精巧な構築物のような雰囲気が濃厚です。最後の場面、メグとピーティのやりとりから感じられる静謐は、詩的な美しさに満ちていて、それまでの展開を一気に過ぎ去った別世界として俯瞰させます。いやラストだけではありません。劇中に含まれるスタッカート的な短い言葉の応酬やスピーディ・リズミカルな言葉と台詞の曲芸的連鎖は、翻訳を通しても、言語遊戯的な、詩的な快感に読み手、観客を導きます。ホストの江尻氏は「わけのわからない」芝居であることを強調されていましたが、わけのわからない芝居でありながら洗練された娯楽性も豊かな作品だと思いました。


次回、次々回の予定について記しておきます。詳細についてはまた改めて告知します。
次回8月の古典戯曲を読む会@東京は、
8/17(土)19時です。場所はいつもとは異なり、池袋の東京芸術劇場の小会議室1です。望月正人さんがホスト役でチェーホフ「プロポーズ」を読みます。テキストは浦雅春訳『桜の園/ブロポーズ/熊』を用います。テキストは印刷して配布します。

9月からはしばらくの間は水曜夜の開催とする予定です。
9/18(水)19時より早稲田大学戸山キャンパス33-2号館114教室で開催します。
ビューヒナー「ヴォイツェック」(岩淵達治訳、岩波文庫)を取り上げます。ビューヒナー生誕200年記念、岩渕先生追悼企画ということで。今年から来年にかけて、「ヴォイツェック」の上演が東京近辺でいくつかあるようなので、とりあげるタイミングとしてはいいように思います。
古典戯曲を読む会@東京で取り上げる最初のドイツ戯曲となります。ドイツ語圏の演劇に詳しいかたとこれを機に知り合いになることができればとても嬉しいですね。

(古典戯曲を読む会@東京 世話役 片山)


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