18世紀前半に活躍したフランスの劇作家、マリヴォーの『奴隷島』を読みました。奴隷が主人となり、主人が奴隷となる島に漂着した主従二組(男二人と女二人)の混乱を描く喜劇。当時流行っていた〈ユートピア〉を題材とする作品です。
マリヴォーの一般的知名度の低さゆえに、参加者が集まるかなと気をもんでいたのですが、結果的には七人の参加者がありました。今回はほぼノンストップで、約一時間かけて読み切りました。
思っていた以上に興味深い作品でした。主従二人組を中心に据えた古典的喜劇の枠組みを土台にしつつ、シェイクスピアの『嵐』の設定、トマス・モア
以来の『ユートピア』的社会風刺、中世フランスの愚人祭にも見られる〈逆さまの世界〉の導入、などが、短い作品のなかに詰め込まれた様々なモチーフに気づくことができました。18世紀前半のロココ的な軽やかさと意地悪さも基調になっています。また下僕が主人の役割を担うという点では、先日見たジュネの『女中たち』の構造も連想させる作品でした。
精妙な台詞のやり取りの面白さ、役割を入れ替えるという設定が生み出す劇中劇=メタ演劇的構造、解釈の幅が大きい登場人物の言動、作者の立ち位置の曖昧さ、などなど豊かな可能性を持つ優れた戯曲だと私は思いました。
マリヴォーは日本ではあまり上演されませんが、そこで提示される主題は現代にも通じる普遍性があり、その提示の仕方もスマートな趣向があります。演出家の手腕を発揮できる多様な可能性を持つ作家なので、日本でももっといろいろな人が取り上げてしかるべき劇作家のように私には思えます。
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