今月は曜日を変えたためか、あるいは選択した戯曲ゆえか、新しい参加者が多い回でした。進行役は世話人のひとりである片山が務めましたが、参加者のなかに「ヴォイツェク」に詳しい方が何名かいたので、適宜そうした方の解説や参加者の感想を挟みながら、読み進めました。
「ヴォイツェク」は未完の作品で、1835年から1836年にかけて書かれた三通りの不完全な原稿しか残っていません。インクも薄く、場面の順序もバラバラで、その解釈・解読は、校訂者によって大きく異なります。最初の出版はカール・メーミール・フランツォース(1848-1904)が断片的遺稿30編を26場に再構成した「ヴォーツェク悲劇断片」(1879)です。岩波文庫の岩淵達治訳は、ベルゲマン版(1922、校訂新版1949)を底本とし、この版本は有名なアルバン・ベルクのオペラ《ヴォツェック》と同様に、「大尉のひげそりの場面」を冒頭に置いています。しかしその後に刊行された版では、ベルゲマン版では二番目に置かれている「広野の場」を冒頭に置くことが多く、現在も刊行中の最新の校訂版、マールブルク版(1980-)でもそうなっています。
テキストは岩波文庫で56ページの長さで、25の場および3つの補遺からなっています。一回で読み切ることのできる長さです。今回の読書会では、場の区切れ毎に朗読者を割り振りました。「ヴォイツェク」には何箇所か、登場人物が歌う歌が入っているのですが、その箇所は当たった人に適当な節をつけて歌って貰いました。
一応時系列で並んでいます。しかしその繋がりのロジックは必ずしも明瞭ではありません。意味のよくわからない不可解な箇所が多くあるテキストですが、声を出して読んでいると、あるいは他人が声を出しているのに耳を傾けていると、不可解ながらテキストを楽しみ、味わいながら読むことができたように思います。詳しいかたの解説もテキストから想像力を導き出すよいガイドとなりました。
東京で行われているもう一つの戯曲を読む会、『本読み会』の方も「ヴォイツェク」の回に参加し、レポートを記して頂いています。
http://honyomikai.net/aside/2013/09/19/woyzeck/
次回の古典戯曲を読む回@東京は、10/26(土)19時より、早稲田大学戸山キャンパス教室で開催されます。次回、次々回はイタリア演劇翻訳者の石川若枝さんを進行役に招き、ナタリア・ギンズブルグ「インタビュー」を読みます。ギンズブルグの小説は須賀敦子訳で何冊か出ていますが、戯曲の訳は刊行されていません。詳しくは改めてこのブログで告知します。
なお今年はビューヒナー生誕200年ということもあり、「ヴォイツェク」関連の公演が多いです。映画の上映、オペラ版の上演もあります。以下にその情報を記しておきます。
- 冨士山アネット × 冨士山アネット/Manos.(マノス) [Woyzeck/W](ヴォイツェク ダブル)
- こまばアゴラ劇場
- 構成・演出・振付:長谷川寧
- 9/13(金)-23(月・祝)
- みやしろ演劇パーティ「生きてゐるヴォイツェク」@平原演劇祭第4部
- 「ゲオルク・ビューヒナー生誕200年水没祭」 宮代町新しい村水上ステージ (東武動物公園駅徒歩15分)
- 作・演出:高野竜
- 9/22(日)17時より。観劇無料、予約不要、投げ銭歓迎。食事付(陰陽せいろ[冷たい蕎麦と熱いうどん])。駐車場有り。
- 演目: みやしろ演劇パーティ「生きてゐるヴォイツェク」(出演:生田粋、志賀未奈子(劇団12)、澁川智代(宗教劇団ピャー!!)) ;短距離男道ミサイル「野武士RE-ism」 ; 天丼「(題未定 新作)」; すいか記念日「女子高生がどぼどぼ
- 『音楽劇 ヴォイツェク』@赤坂ACTシアター
- 脚本 : 赤堀雅秋、演出 : 白井晃、音楽 : 三宅純
- 2013年10月4日(金)~2013年10月14日(月・祝)
- S席:9,500円 A席:8,500円 (全席指定・税込)
- ヴェルナー・ヘルツォーク『ヴォイツェク』@下高井戸シネマ
- 1979年。1h21。出演:クラウス・キンスキー
- 10/16(水)PM9:10-10:33
- アルバン・ベルク《ヴォツェック》@新国立劇場
- バイエルン州立歌劇場との共同制作で2009年に初演された舞台の再演。
- 演出:アンドレアス・クリーゲンブルク、美術:ハラルド・トアー
- 2014年4/5-/13。4回公演。
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